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【ウィルコム展望】通話定額サービスで堅調に契約数を伸ばした2006年

http://arena.nikkeibp.co.jp/col/20070115/120546/



 携帯電話会社の影に隠れがちだが、通話定額サービス「ウィルコム定額プラン」を引っさげて順調に好調を持続しているウィルコムの2007年を占う。前編として、まずは同社の2006年を振り返ってみよう。

■高度化PHS規格「W-OAM」!データ通信の高速化で幕を開けた2006年



 ウィルコムは通信方式にPHSを採用していることなどにより、2006年の携帯電話市場で最も話題の大きかった「携帯電話番号ポータビリティ(MNP)制度」に参加していない。そのため、他社と比べると大きなトピックはなかったとも言える。ただし、それを逆手にとることでNTTドコモなどの他社PHSサービス向けの通話も定額とした「070定額」を開始するなど、独自の展開を見せた。

 2006年のウィルコムは、2月に開始された高度化PHS「W-OAM(WILLCOM Optimized Adaptive Modulation)」からスタートした。W-OAMは、無線通信の変調方式に従来のQPSK(Quadrature Phase Shift Keying:四位相偏移変調。一度に4値(2bit)の情報を送受信できる方式)だけでなく、BPSK(Binary Phase Shift Keying:二位相偏移変調。一度に2値(1bit)の情報を送受信できる方式)と8PSK(8-Phase Shift Keying:八位相偏移変調。一度に8値(4bit)の情報を送受信できる方式)の2方式を採用。これは、それぞれをダイナミックに切り替えることで、電波状態が強いときには最大通信速度が最大1.6倍に、電波状態が弱い場合は通信速度を半分にして安定した通信を行えるようにするというもの。通信の高速化だけでなく、安定化の効果も期待できるサービスだ。

 W-OAMに対応した高度化PHS基地局は、首都圏、名古屋、大阪などの都市部エリアを中心に導入されている。下にウィルコムが公開した2006年11月時点での首都圏のエリアマップを掲載してあるが、今後も利用者数が多いところから順次対応していく予定だという。

 現在のW-OAMは、最大通信速度が8Xパケット方式で408kbps、4Xパケット方式で204kbps、2Xパケット方式で102kbpsとなっている。また、2月のW-OAMのサービス開始に伴い、これまで1Xパケット方式が採用されていた料金コース「つなぎ放題」やオプション「リアルインターネットプラス」などが料金据え置きで2Xパケット方式に変更されたのも話題となった。

▲ W-OAMの首都圏のカバーエリアマップ。通信の高速化や安定化のほか、W-OAMに対応した高度化PHS基地局はチャンネル数も拡大するため、ユーザーの多いエリアから導入されている

【画像をクリックすると拡大表示されます】 ▲ 高度化PHS基地局により、単位面積当たりのネットワーク容量(チャネル数)の大容量化を推進。ネットワークの厚みを増し、ユーザーが集中しても通信速度が落ちる割合を小さく抑えられる

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▲ W-OAMによるデータ通信のイメージ図。基地局に近い(電波状態の安定している)ところでは8PSKで通信し、電波状態に合わせてQPSKおよびBPSKというように瞬時に切り替える。このように最適な変調方式を利用することで、より高速で安定したデータ通信が可能となる

【画像をクリックすると拡大表示されます】 ▲ W-OAMによる音声通話のイメージ図。BPSKの導入で、電波到達度が5dB(約3倍)となり、より広範囲で通話・通信が可能となった。しかし、残念ながら待受時にはBPSKを利用できない。つまり一度発着信してしまえば、これまで圏外だった場所に移動しても通話や通信ができるなど、移動時の安定性が増していることが利点となる

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■ 一番の盛り上がりは7月に発売されたスマートフォン「W-ZERO3 [es]」


 ウィルコムで2006年に一番盛り上がったのは、7月に発売されたシャープ製スマートフォン「W-ZERO3 [es](WS007SH)」だろう。W-ZERO3 [es]は、2005年12月に発売されたスマートフォン「W-ZERO3シリーズ」の新モデルとして登場。ディスプレイの下にダイヤルキーを搭載することで、より通常のケータイに近くなったのが大きな特徴だ。

 サイズもW-ZERO3に比べてスリムアップされ、デザインも野暮ったさがなくなり、女性でも持ちやすくなったと好評を博した。「USB On-The-Go」規格によるUSBホスト機能を採用したことで、ピクセラのワンセグチューナーアダプター「PIX-ST040」といった機器も登場。こうした周辺機器の多様性を持ったことも、魅力を高めた理由の一つだった。中にはBluetoothを利用して、W-ZERO3 [es]をロボットのリモコンに仕立て上げるユーザーが現れるなど、コアな方向にも幅が広がったようだ。

 もちろん、デジタルARENAでもW-ZERO3 [es]をいち早くゲットし、「W-ZERO3 [es] 徹底レビュー」を行った。この特集がケータイチャンネルの2006年で一番アクセスが多かったというのも、ケータイ市場全体の中でも話題性が高かった証拠だろう。

▲ W-ZERO3 [es]はこのように縦に持って、ケータイのようなダイヤルキーだけでの操作にも対応した。文字入力には新たにATOK+APOTによる予測・推測変換を搭載し、片手でも操作だけでなく、文字入力も快適に可能となった

【画像をクリックすると拡大表示されます】 ▲ W-ZERO3 [es]も初代W-ZERO3と同様に、スライド式のQWERTY配列フルキーボードを搭載している。これにより、両手で横に持てば、フルキーボードでがんがん長文を入力できる。ケータイスタイルと切り替えられる“ツーウェイスタイル”を強く打ち出した製品となった

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■ 「nico.」や「papipo」、「9 (nine)」などのW-SIM対応製品が多数登場!



 NTTドコモやau、ソフトバンクモバイル(旧ボーダフォン)などは、携帯電話番号ポータビリティ(MNP)が11月に実施されたこともあり、多くの新機種を2006年に投入した。それに比べて悲しくなるほど、ウィルコムからは通常の音声機種が投入されなかった。唯一、2005年に発表された日本無線製「WX310J」が1月に発売されたのみとなった。

 ただし、その穴を埋めるべくW-SIM(ウィルコムシム)に対応した音声機種がいくつか発売されている。4月にバンダイ製の子供向け端末「キッズケータイ papipo!」、7月にネットインデックス製「nico.(WS005IN)」、12月にケーイーエス(KES)製「9 nine(WS009KE)」が登場。3機種とも多機能モデルではないが、それぞれターゲットを絞り込んだ特徴のある機種であり、販売も好調なようである。

 ウィルコムでは、このようにさまざまにニーズに対応できるようなバリエーション豊かなラインアップをそろえていく戦略を取っており、「少量多品種」「カスタマイズ」といったことをキーワードに端末開発を展開していくようだ。他社が同じような機能を持つ機種を複数投入しているのとは違う戦略と言えるだろう。

 しかし事業規模が小さいウィルコムが独自戦略により生き残るためだとはいえ、売れ筋となる通常の音声機種が1年以上発売されないというのは、ユーザーとしては寂しいところでもある。

▲ 「9(nine)」(写真中央)とCDアルバムケース(同左)、「iPod nano」(同右)を並べてみたところ。高さはCDケースとほぼ同じで、幅はiPod nanoとほぼ同じとなる。iPod nanoと並べてもデザインや質感に違和感がなく、洗練されている

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▲ ウィルコムでは個人向けから組み込みなどを含んだ法人向けまで、横のラインアップを細かく埋めていくといった戦略を取っている。そのために他社と比べるとマスユーザー向けとなる「WXシリーズ」などの通常音声機種のラインアップが少ない印象を受ける。今後は、図でいう縦方向のラインアップ充実にも期待したい

【画像をクリックすると拡大表示されます】 ▲ ウィルコムでは、オープンなOSを使ったスマートフォンに特定ターゲット層向けのオリジナルアプリやインターフェースを搭載し、他社と組んで販売するといった試みも行っている。内藤証券や楽天証券と組んで、簡単に操作できるアプリケーションを搭載し、オンライントレードに踏み出せなかった個人投資家向けにW-ZERO3を売り込むなどしている

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■ 2006年は純増数も堅調に推移し、8月から月次ベースで黒字化

 ウィルコムの契約者数は、KDDIやNTTドコモに続いて業界3位の純増数となった2005年と同様、2006年も毎月数万という水準で純増を実現した。後半にはMNP(携帯電話番号ポータビリティ)の影響もあって純増数は多少減ったものの、1年間で62万8300契約が増えたことで06年12月末には全契約者数が445万9500となった。

 純増数自体はKDDIやNTTドコモに劣っているものの、純増(伸び)率は最も大きい。これも他社が追随できていない音声定額サービスや、パソコンを接続してのデータ通信定額といった独自のサービスが支持されていることによる。また、他社のようにテレビCMなどの広告を大々的に行うのではなく、利用ユーザーからの“口コミ”によって地道に商品・サービス内容が伝播しているところが大きいようだ。音声定額を実現したことで、一人でウィルコムに加入するよりも家族や友達と一緒に加入した方がお得になったことも契約者増の大きな要因となっている。

 06年10月24日にMNPが開始された直後から、個人契約による新規加入ユーザー数に10%程度の影響が出ていたが、現在は戻ってきているとのこと。実際に06年12月の純増数は若干盛り返してきている。07年1月にソフトバンクが、月額基本料980円で1~21時のソフトバンク同士の通話料が無料となる「ホワイトプラン」を発表したことでまた影響が出そうだ。だがこれも時間制限があることなどによって、ウィルコム定額プランからどの程度流出するかは、フタを開けてみなければ分からないといった印象だ。

 これらの純増により、06年8月~11月は月次ベースで営業利益で黒字化を達成したとのこと。これまでウィルコム定額プランによるバックボーンのアクセスチャージと端末販売による販売奨励費の影響で赤字となっていたが、アクセスチャージの問題はITXというNTT交換局にNTT地域網をバイパスする装置を導入することで削減。販売奨励費も開発コストが少ないW-SIM対応機種を増やしたり、ローエンドモデルを長期間に渡って販売するなどで削減した。06年度は難しいかもしれないが、07年度は確実に黒字化することを目標としており、経営基盤を安定させた上での株式公開を目指している。

▲ ウィルコムはマーケティング展開において“口コミ”戦略を重要視している。これはウィルコムに限らずここ数年の消費指向のトレンドだ。信頼している家族・友人からインターネット上の有名ブロガーまで個人の差こそあれ、口コミを参考にして“いい商品”を購入する傾向にある。また、何より他人に薦めたい商品・サービスとしてサービス内容やブランドが支持されているのも重要なことだ

【画像をクリックすると拡大表示されます】 ▲ ウィルコムでは口コミをより加速させるために様々なコミュニティーに注目しており、戦略の一つとして「ウィルコム紹介キャンペーン」を実施している。紹介キャンペーンは07年1月には法人向けにも拡大している。類似のサービスは、06年11月にソフトバンクモバイルがスタートした「お友達・ご家族紹介キャンページ」、06年12月にau(KDDI)がスタートした「ご紹介deポイントプレゼント」などが挙げられる

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▲ ウィルコム定額プランの加入者数推移。05年5月に開始し、06年10月におよそ150万ユーザーとなっている。ソフトバンク「ゴールドプラン」「ホワイトプラン」が1~21時といったような時間制限を設けていることから分かるように、音声通話の完全定額サービスは携帯電話各社には真似ができないことが判明したといってもいいだろう。ソフトバンクが避けた21~翌1時には、ウィルコム定額プランユーザーの通話量全体の約55%が集中するという

【画像をクリックすると拡大表示されます】 ▲ ウィルコムの契約者数推移。06年後半にはMNPの影響もあって純増数を減らしているが、他社がMNP開始に併せて多数の新機種を発売したのに比べて、ウィルコムの06年後半モデルは「9(nine)」のみの発売と寂しい限り。にもかかわらず、純減にはならないという強さを見せた。また、2006年12月の純増数は11月よりも盛り返してきていることも注目だ

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 2006年は堅調に純増したウィルコムだが、果たして2007年はどうなるのだろうか。2007年の展望については次回お伝えしたい。

筆者紹介 memn0ck(めむのっく)

1976年東京生まれ。「めむのっく」はハンドル名。ケータイ・モバイル情報マニアで、小さなデジタルガジェットに目がない。趣味でケータイ・モバイル関連の個人ニュースサイト「memn0ck.com」を運営しているが、日常は白衣を着た理系野郎をやっている兼業ライター。

         

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