販売奨励金とシムロックが後押ししたケータイ・ビジネスに限界 通信モジュールの分離で、水平連携型のビジネス構築へ
2007年4月3日 15時33分
ケータイの世界もブロードバンド化とIP(インターネット・プロトコル)との融合が急速に進み、従来の通信業界のビジネスモデルも根本的な見直しが迫られている。ウィルコムは、20Mbpsのスループットを実現する次世代PHSを開発する一方で、通信機能のモジュール化に着手、これまで日本のケータイキャリア各社が前提とした垂直統合型のビジネスモデルに対して、水平連携型のビジネスモデルを構築するという新たな戦略を展開し始めた。「ブロードバンド&IP時代」のケータイ戦国時代に、PHSのアドバーンテジをどこに求め、新たにどのようなビジネスモデルを構築していくのか、ウィルコムの執行役員副社長、近 義起氏に聞いた。
http://www.nikkeibp.co.jp/news/biz07q2/529929/
- ウィルコムは、通信機能を担うコア・モジュール(W-SIM)とジャケット(端末ハード)を分離して提供するという新たなビジネスモデルを、他のキャリアに先駆けて行ってきた。2005年に発売したWindows Mobile端末「W-ZERO3」のヒットによって、日本でもこうした市場が成立しうること自ら示したが、こうした戦略をとる狙いはどこにあるのか。
通信の世界で今、起きている最も根本的な変化は、通信がIPと融合しつつあることだ。音声通信が中心の市場では、キャリアを軸とした垂直統合型のビジネスモデルがうまく機能した。しかし、IPの世界では、ルールが根本から変わる。固定線のブロードバンドの世界が既にそうなったように、無線ブロードバンドにおいても、水平分業型のビジネスモデルに移行せざるを得ないだろう。
誤解してもらっては困るのは、顧客を囲い込むことのできる垂直型の事業モデルの方が、安泰だし、楽に商売ができる。できれば、こうした状態を長く続けたいと、当社も含めて日本のケータイキャリア各社は皆そう考えているだろう。しかし、マーケットの論理はそれを許さない。変化することが不可避のものであるならば、他に先駆けて変わろう、先頭を走って見せようというのが、われわれの基本的な考え方だ。
コア・モジュール(通信用SIM)とジャケット(端末)が分離しているのは、海外の携帯市場では、既に常識だ。海外のユーザーは、シム(SIM)を入れ替えることで、地域や国によって通信事業者を自由に選ぶことができる。日本の場合は、「シムロック」といって、ひとつのジャケット(端末)が1社の通信会社のサービスしか使えない状態にすることで、ケータイキャリアを軸とした垂直統合型の事業モデルが成り立ってきた。
日本のケータイ市場を後押しした販売奨励金モデル
日本でこうした事業形態が成立してきたことには、強力なインセンティブ・ビジネスモデル、すなわちケータイキャリアから流通に対して流れる「販売奨励金」の存在が背景にある。日本のケータイ市場は10年間で9000万台という驚異的な成長を遂げたが、その成長を強力に後押ししたのが、この販売奨励金モデルだ。海外の通信事業者が日本のケータイ市場を見て、驚くのは、高性能なデジタルカメラ機能を搭載したケータイが、タダ同然の価格で売られている状況だ。こうしたことが成り立つのは、ユーザーが一定の年月、同じ通信会社に通信料を払い続けてくれることが大前提になっているからで、端末の本来の価格が、毎月の通信料に上乗せされて、回収されているというのが実態だ。こうした状況は、果たしてフェアといえるのかという指摘が「シムロック」や「販売奨励金」の問題と合わせて広く議論されるようになっている。
日本のケータイ市場は1億人を突破したが、既に数の上では頭打ち状態に入っており、これまでのような急成長は望めない。インセンティブ・ビジネスモデルは、確かに市場の立ち上げ時には、強力に作用したが、今後もこのままやっていけるとは誰も考えていない。
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