根付くか携帯割賦販売 「0円」、通信料割引どちら選択
携帯電話端末を分割払いで購入できる「割賦方式」の導入が増えてきた。ソフトバンクモバイルが昨年9月に初導入したのに続き、PHS(簡易型携帯電話)専業のウィルコムも今年7月から採用。NTTドコモやKDDIも導入を検討している。「0円」や「1円」の携帯電話が主流の中、なぜいま割賦販売なのか。(今井裕治)
http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200706190048a.nwc
≪いずれも大手追随≫
「機種の高性能化で高くなった端末価格を抑えるため割賦制度を導入する」。ウィルコムの喜久川政喜社長は割賦方式を採用する意図を、こう説明する。
同社が7月から始める割賦方式「ダブルバリューセレクト」は、同月に発売するシャープ製「アドバンストW-ZERO3エス」など3機種のPHSが対象。2年間の月賦払いだ。支払期間中は通話などの通信料が割安になる特典を設ける。同社のPHSを10カ月以上利用している加入者で、機種変更するときに限って同方式を活用できる。
例えば、W-ZERO3エスの通常の機種変更価格は3万4800円の一括だが、分割では月々2260円と買いやすい。また、プランに応じて月525~1050円の通信料を割引く仕組みを採用。これにより、24カ月支払い後のPHS購入価格は、同方式を使わない場合に比べ1万9440円高くなる半面、通信料は最大2万5200円割り引かれ、結果的にこれまでの買い替えより安くなる。
ウィルコムは当面、機種変更の利用者だけに適用するとしているが、将来的には新規ユーザーへの適用も検討するという。
昨年9月。割賦の仕組みを業界に先駆けて導入したのが携帯3位のソフトバンクモバイル。ボーダフォン日本法人買収後でもドコモ、KDDIにシェアで大幅に劣るソフトバンクモバイルが、他社と同じ販売を行っていても契約増は見込めない。しかも昨年10月、現行番号のまま他社携帯に移行できる「番号継続制」の導入により他社の「草刈り場」になる恐れもあった。
そこで切り札として考え出されたのが割賦方式。この方式を使えば最低2年間は顧客をつなぎとめることができ、その間の通話やデータ通信収入が安定的に見込めるという思惑だった。
ソフトバンクモバイルが同方式を導入した当初、「0円」や「1円」の携帯に慣れている利用者の理解を得るのは難しかった。しかし、割賦利用者に毎月の通信料を割り引く制度を導入することで実質的な負担額を削減。これにより「新規加入者の大部分が割賦を利用する」(富田克一副社長)ようになり、今月12日には割賦利用者が500万件を突破するまでになった。
新たな販売手法を確立し成功に自信を深めたソフトバンクモバイル。それだけに富田副社長は「いずれ大手社も追随してくるだろう」と予測する。実際、ここにきて、割賦に慎重姿勢を崩さなかったKDDIも「さまざまな料金体系の中で、割賦も検討項目に入っているのは事実」(小野寺正社長兼会長)と採用をにおわせ始めている。
≪物差しがマチマチ≫
ただ、割賦方式には課題もある。端末価格は通常、時間の経過とともに下がる。そのため新機種投入時に設定した割賦価格は分かりやすいが、端末の価格が下がるなかで新たに契約する場合の割賦価格がどうなるのか利用者にとって見えにくい。KDDIの小野寺社長も「いつを基準に値下げするのか。納得のいく価格設定を行うのは難しい」と認める。
先行したソフトバンクモバイルは現在、新機種投入から2、3カ月経過した機種について、販売価格を下げる方式を採用する。だが、各機種の値下げの物差しは「マチマチ」(幹部)といい、必ずしも価格設定に透明性があるとは言い切れない。
たとえばソフトバンクモバイルの「707SC」(サムスン製)は24カ月間の割賦支払額が昨年12月は月2290円だったが、3月1日には980円まで下がった。これに対して、同社の20色のカラーをそろえて人気のある「812SH」(シャープ製)は、2月10日は月2540円だったが、6月現在は2580円に上昇している。
機種の人気や在庫、戦略的に強化したい機種などマーケティングの影響が、価格設定にも色濃く反映されたというわけだ。
こうした課題を抱かえながらも有力な販売方式として割賦方式が広がりをみせはじめた。
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■奨励金を問題視 モバイル研
今年1月に総務省主導で発足された携帯事業の今後を考える検討会「モバイルビジネス研究会」では、現行の「0円」や「1円」で売られる携帯の販売手法を問題視する。希望小売価格が4万~5万円の端末を「1円」で売ることができるのは、携帯事業者が販売店に支払う「販売奨励金」があるから。ドコモやKDDIは、携帯1台あたり3万7000円前後の奨励金を払い、「1円」を成立させている。
この制度では安く携帯を買える半面、毎月の通信料から携帯を安くするための原資が捻出(ねんしゅつ)されている。また、奨励金を使った販売の場合、頻繁に機種を変える利用者が得をして、同じ携帯を長期で使う利用者が割高な通話料を支払うといういびつな構造を生み出すといわれている。
モバイル研究会はこの点を疑問視し、7月ごろにまとめる報告書の中で、奨励金のあり方を巡る最終的な着地点を模索する。
こうした中、既存の事前値下げスタイルの「0円」販売が引き続き販売の主流であり続けるのか、利用者が携帯費用を負担する「割賦」が根付くのか-。 国内の携帯販売のあり方が岐路を迎えようとしている。
昨年10月の番号継続制の導入でにぎわったソフトバンクの売り場(大阪市北区のヨドバシカメラ梅田店)